もし私たちが世界の大きな問題に関心があるならば、なぜ進歩について知る必要があるのでしょうか?

Never Too Late To Mend
24 min readOct 24, 2021

Japanese translation of “Why do we need to know about progress if we are concerned about the world’s large problems?”

データを視覚化するサイトOur World in Data(データで見る私たちの世界)に掲載された“Why do we need to know about progress if we are concerned about the world’s large problems?”という記事の翻訳です。以下、訳文です。

もし私たちが世界の大きな問題に関心があるならば、なぜ進歩について知る必要があるのでしょうか?

Our World in Data(データで見る私たちの世界)の使命

マックス・ローザー
2021年6月7日

なぜ私たちは、「世界のもっとも大きな問題に対して進歩を成し遂げるための研究やデータ」を公開することを使命としているのでしょうか?

その核心にあるのは、単純な真実です。私たちの周りを見渡せば、世界が多くの非常に大きな問題に直面していることは明らかです:

•毎年30万人の女性が妊娠に関連する原因で亡くなっており、これは平均的な日に830人の母親が亡くなっていることを意味します。
•世界の大多数の人々(65%)は、1日あたり10ドル未満で生活しています。また、約10%が1日あたり1.90ドル未満で生活する「極度の貧困」状態で暮らしています。
•世界では過去10年間に4700万ヘクタールの森林が伐採されました。これはスウェーデンの大きさと同じ面積に相当します。
6000万人の小学校の学齢の子供たちが学校に通っていません。
•世界人口の約4分の1の人々(23%)が独裁政権下で生活しています。
•世界の成人の14%は、読み書きをする方法を知りません。
•そして、全児童の3.7%が5歳になる前に亡くなっています。つまり、毎年520万人の子供が亡くなり、平均的な日には世界で1万4200人の子供が亡くなっていることを意味します。

これは恐ろしい問題のリストです。そして、私たちはその反対のことを教えてくれるような情報はあまり耳にしないので、私たちがそれらについてできることは何もないと思い込んでしまいがちです。24時間365日の豊富なニュースサイクルの中でも、これらの問題に対して前進することが可能であることを示唆するような情報を聞くことはほとんどありません。教育においても同様で、飢餓や児童の死亡、森林破壊をなくすにはどうしたらよいかといった問題がカリキュラムに組み込まれることはめったにありません。

その結果として、多くの人が「世界を良い方向に変えることはできない」という見方を持っているのも驚くことではありません。多くの大きな問題について、大多数の人は実際のところ悪化していると信じています[日本語訳]。[1]

しかしながら、そうではありません。私たちは、これらの大きな問題に対して前進することが可能であると知っています。なぜなら、私たちはすでにそれを成し遂げているからです。世界中の人々の努力により、私たちはこの一世代の間にこれらの問題に対して進歩を遂げてきました。上に挙げた大きな問題は、いずれも過去にはもっと深刻だったものです。

•妊娠に関連する原因で死亡する女性の数は、1990年の年間53万人から年間30万人へと減少しました。
•極度の貧困状態で暮らす人の割合は、過去10年間で21%から10%未満へと減少しました —1日あたり10ドル超で生活する人の割合は、4分の1から3分の1へと増加しました。
•世界の森林破壊は、1980年代の1億5100万ヘクタールから2010年代には4700万ヘクタールへと、3分の1に減少しました。
•学校に通っていない小学校の学齢の子供の数は、1990年代半ばには1億1000万人を超えていましたが、現在は6000万人とほぼ半減しました。
•独裁的な体制のもとで暮らす世界の人々の割合は、1980年代の45%から23%へと減少しました。
•読み書きをする方法を学んだ世界の成人の割合は、1980年の70%から現在は86%に増加しています。
•そして、5歳になる前に亡くなった子供の割合は、1990年の9.3%から3.7%へと減少しました — 年間1250万人の子供が亡くなっていたのが520万人にまで減少しました。

より良い未来を築くための私たちの希望や努力は、過去の理解と密接に関連しているため、これまでの世界の発展を学び、伝えることが重要です。私たちの世界をデータで学び、当時は乗り越えられないと思われた課題をどのように克服してきたかを理解することは、私たちが現在直面している問題に取り組むための自信と指針を与えてくれるでしょう。生活条件は改善できますし、私たちはそれらがすでに改善されてきたことを過去から知っています。

しかし、私たちが現在直面している問題のひとつひとつに対して、これから先の年月において、私たちが進歩を成し遂げることができるかどうか、そしてどのように成し遂げるかという難しい問題にも取り組んでいく必要があります。

それでは、上記のリストの中でも最も深刻な世界的問題の1つである「児童の死亡」について見てみましょう。子供たちの死因の上位にはマラリアがあります。死亡した児童の12人に1人がマラリアに感染したことによるものであり、1年間で35万人の子供が亡くなっています[2]。

マラリアを研究している人たちは、この病気に対して継続的に前進することのできる可能性が高い理由をいくつか見出しています。マラリアとの闘いを阻んでいるのは、しばしば私たちの進歩を制限している3つの要因です:

もっとお金があれば、さらなる進歩が可能となるでしょう:過去15年間で世界のマラリアによる死亡者数が半減したのは、主として殺虫剤で処理された蚊帳のおかげです。この蚊帳の下で眠ることで、マラリアを媒介する蚊から子供たちを守ることができます。この蚊帳に対してお金を使うことが、マラリアによる死亡者数を減らすための効果的な方法であることがわかっています。
問題は、蚊帳を必要とするすべての子供たちに蚊帳を提供するための十分な資金がないことです。その結果、毎週何千人もの子供たちが命を落としています。現在、子供たちがマラリアで亡くなっている第一の理由は、資金不足です(こちらから寄付ができます)。
1人でも多くの人が目標を定めて進歩に向けて取り組むことで、違いを作り出すことができます:マラリア対策の進展につながるのは、資金が増えることだけではありません。研究者がマラリアのワクチンを開発できる可能性は非常に高いように思われます。[3]この技術が開発されれば、多くの命が救われ、最終的には何百万人もの人々が毎晩蚊帳の下で寝る必要がなくなるでしょう。必要なのは、目の前の問題を理解し、その解決策を見つけるという目標を自らに課す、技能のある勤勉な人たちです。
マラリアがもっと注目され、解決可能な問題であることが理解されれば、より多くの進展が可能になるでしょう:結局のところ、もしマラリアがそれにふさわしい注目を浴びていれば、マラリアに取り組むための資金や優秀な人材が不足することはないだろうと私は考えています。年間35万人の子供が亡くなっているということは、平均して1日に960人の子供が亡くなっているということです。マラリアは大きな世界的な問題ですが、解決可能なものです。私たちを制限しているものとは、私たちがそれを理解していないということです。

マラリアについて言えることは、世界が直面する多くの問題にも当てはまります。進歩を達成することは難しいですが、可能です。

過去2世紀にわたって成し遂げられた進歩は、私たちが生きている間に終わりを告げるものではありません。世界をより良い場所にする可能性があり、それを実現するのは私たちにかかっています。

進歩の可能性は、私たちが人生で何をするかということにとって重要であるべき

多くの人々が苦しんでいる実質的な問題を軽減することは可能ですし、将来起こりうる問題を予見してそのリスクを軽減することも可能ですし、私たちを取り巻く環境を繁栄させるような変化を実現することも可能です。この事実、つまり進歩は必然ではないものの、可能なものであるという事実は、すべての人にとって重要であるべきです。

私は、個人的には、進歩することが可能な状況にあるならば、私たちには進歩を求める義務があると考えています。しかし、たとえあなたがそれを義務だと思わなくても、機会だと考えることもできます。それは他の人を助けるチャンスであり、あなたの人生において世の中の役に立つ仕事をする可能性でもあります。

あなたが義務と考えるか、機会と考えるかにかかわらず、私たちは自分のお金、公的な対話への貢献、民主的な投票、そして自分の人生を使って、世界が進歩するのを助けるために何ができるのかを自問すべきです。

Our World in Dataの使命はこれにどのように応えているのでしょうか?

Our World in Dataは、世界の最も大きな問題に対して進歩を遂げるための研究とデータを公開しています。

私たちがこれを使命とした理由は2つあります。私たちは進歩に向けて取り組んでいる人々が必要とする研究やデータを提供したいと望んでいます — 私たちはそのようなコミュニティーを支援したいのです。

そして、私たちはより多くの人々が大きな問題について学び、自身のエネルギーや資源を使って進歩に貢献するという決断をしてもらいたいと望んでいます — 私たちはそのようなコミュニティーを育てたいのです。

世界の最も大きな問題に関する研究とデータを提供することで、進歩に向けて取り組む人々を支援する

世界の非常に大きな問題の解決策を見つけるために人生を捧げている人たちは、すでに何千人もいます。

より安全なエネルギーシステムを構築するエンジニア、より良い医療のための運動をしている活動家、新薬を開発する科学者、他国から学びたいと望んでいる政治家、世界の貧困について生徒に伝えたい教師、新技術を市場に投入する企業の創業者、どこに力を注ぐべきかを決める必要のある非営利団体など、多くの人々がこのウェブサイトを頼りにしていることを私たちは知っています。

私たちの読者は、彼らが何者であるかによって定義されるのではなく、彼らが何に関心を持ち、何をしたいと望むのかによって定義されます。私たちが支援したいと望むのは、大きな問題に対して前進するために取り組む人たちです。

そのような人々は皆、自分たちが取り組んでいる問題を理解するために、そしてそもそもどの問題に取り組むべきかを決めるために、データや研究を必要としています。例えば、彼らは、世界の異なる地域ではどのような病気が蔓延しているのか、国ごとのエネルギー源の組み合わせをどのように比べることができるのか、あるいは、世界における清潔な調理用燃料やきれいな水へのアクセスは時系列でどのように変化しているのか、といったことを知りたいと思っているかもしれません。

私たちがこのような人々をうまく支援することができるのは、彼らが必要とする情報の多くがすでに存在しているからです。ここで私たちが解決しなければならない問題は、この既存の知識が、しばしばアクセスできないデータベースに格納されていたり、有料の壁の向こう側に閉じ込められていたり、学術論文の専門用語に埋もれていたりといったように、アクセスも理解もできないことが多いということです。私たちの目標は、エビデンスの利用を増やし、大きな問題に関する既存の知識を理解しやすく、アクセスしやすくすることによって、大きな問題を解決しようとする人たちが最高の仕事ができるようにすることです。

進歩が可能であることを明確にしない文化に挑戦することによって、進歩に向けて取り組む人の数を増やす

私たちの第二の目標は、最も大きな問題に対して進歩を遂げることに貢献しようと決心する人の数を増やすことです。

世界の大きな問題を研究するために多くの時間を割き、その解決方法を模索することを人生の中心に据えている人は、すでにたくさんいます。しかし、このグループをさらに成長させ、グローバルな文化の中で非常に強力な勢力となるようにすることは可能だと私たちは考えています。なぜなら、ほとんどの人が世界の問題に懸念を抱いており、より良い未来に貢献したいと考えているからです。

しかしながら、問題は、大きな問題に関心を持つことは、人が進歩に向けて取り組むための1つの前提条件に過ぎないということです。もう1つの重要な要件は、人が進歩が可能であることを知っていることです[4]。

下の図は、私たちの主張を表したものです。

大きなオレンジ色の円は、大きな問題に関心を持っている多くの人々を表しています。緑色の円は、進歩が可能であるということを知っている人々の、かなり小さなグループを表しています。ここでの考え方は、この2つのグループの両方に属する人たちが、進歩に向けて取り組むという決断をしているということです。そのため、私たちは緑色の円を大きくして、いつの日かオレンジ色の円と同じくらいの大きさにしたいと思っています。

歴史学者のアントン・ハウズは、イノベーションの歴史を研究し、こう書いています。「人々がイノベーションを起こすのは、そうしたいという着想があるからである。…そして、人々がイノベーションを起こさないのは、多くの場合、単にそうすることが心に思い浮かばないからである。もちろん、インセンティブも重要である。しかし、人はイノベーションを起こすことを選択する前に、少なくともイノベーションのアイデア、つまり向上心を持つ必要がある。」進歩を遂げるためには、私たちは進歩が可能であるという考えを持つ必要があります。

進歩が可能であることを知っている人の数を増やすことは非常に重要です。なぜなら、世界で最も差し迫った問題のほとんどすべては、集合的な行動の問題だからです。それらは個人では解決することができず、多くの人が真剣に考え、力を合わせて解決に向けて努力する必要があるような問題です。そのような問題の解決に失敗するのは、そもそも私たちが着手していないからであり、多くの大きな問題ではこのような状況に陥っています。私たちは社会科学者のアリス・エヴァンスが「失望の罠」と呼ぶものにはまってしまい、世界をよりよい方向に変えるどころか、前向きな変化を知らずに、前向きな変化はありえないと誤解してしまうのです。

多くの人が「進歩は不可能だ」と考えているという事実は、さほど驚くべきことではありません。私たちの文化における強力な勢力は、進歩が可能である、あるいは起こっているという視点を提供していません。むしろ、衰退は避けられないと示唆していることがしばしばあります。

ニュースメディアは、私たちが直面している大きな問題に向けて私たちの注意を向けることもしませんし、そのうちのいくつかに対しては前進しているという事実に注意を向けることもしません。ニュースメディアは日々の出来事に焦点を当てていますが、上に挙げたような持続的な大きな問題や、それらに対する進捗状況はニュースサイクルの中で場所を見つけることはありません。

私たちの教育システムもまた、どうすれば私たちが進歩を遂げることができるかを考えさせるものではなく、私たちが成し遂げた進歩について学ぶことすらほとんどありません。人類がどのようにして生活条件を改善してきたかという、最も基本的な成果についてさえ、ほとんどの人は知ることもなく学校を卒業しています。世界の発展に関する基本的な事実についての貧弱な知識がその証拠です。

大衆文化もしばしば有害なものとなります。それは往々にして、なかった過去をロマンティックに描いたり、明日のことを語る際には、可能性のあるより良い未来を想像するのではなく、ディストピア的な未来像を繰り返し描いたりしています。

時には、研究者や活動家でさえも、進歩は不可能だという信念を強めてしまうことがあります。彼らは自分たちが関心を持つ問題の深刻さを強調しようとするあまり、知らず知らずのうちに、現状を変えることは絶望的であるというようにしてその問題を提示してしまうことがあります。最悪の場合、これは彼らが望んでいることとは逆の結果となり、効果的な関与ではなく受動的な宿命論となってしまいます。

そして最後に、一部の知識人は、進歩が可能であると信じることは、世界の真の姿について十分な情報を得ていないことの証であるという考えを広めています。世界で起きているいくつかの問題の難しさのために、いくらか深い悲観的な見方となるのは仕方のないことです。しかし、私たちが直面しているすべての問題が悲観的な見通しを正当化するわけではなく、意気消沈が誰かの知的な基本姿勢になるべきではありません。時には楽観主義者が現実主義者であることもありますし、不当な悲観主義そのものが進歩を成し遂げることの妨げになっていることもあります。

私たちの目標は、この状況を変えることです。私たちを取り巻く世界についての研究やデータにアクセスして理解できるようにすることによって、この先にある問題の難しさとその解決策の可能性を理解できるような視点を提供したいと私たちは望んでいます。

私たちOur World in Dataは、大きな問題の解決策を模索する人々の文化を育てることは可能だと信じています。先に挙げたそれぞれの文化的な勢力の中には、変化に向けて努力している人々がいます。研究者、活動家、知識人、ジャーナリスト、教師の中には、この先にある問題を説明することに熱心な人たちと同じくらい、前に進むための解決策を見つけて伝えることに熱心な人たちもいます。進歩のための強力な文化は既にあり、私たちはそれをさらに広げていきたいと考えています。

この仕事の動機は、冒頭にまとめたとおりです:もし進歩を成し遂げることが可能なのであれば、私たちには進歩を成し遂げる義務があります。必要がないにもかかわらず、世界の多くの人々が貧困にあえぎ、子供たちが死に、人々が飢え、環境を破壊しているということは受け入れられるものではありません。

私たちはすべてが良くなっていると言っているわけではない

疑念を避けるためにも、私たちが言っていないことを強調しておく価値があります。

私たちは、すべてが良くなってきているとは思っていません。いくつかの物事は、はるかに悪くなっています。1940年代以降、私たちは自分たちの文明を破壊しうる核兵器を保有しています。化石燃料の燃焼は毎年何百万人もの人々の命を奪う大気汚染を引き起こし、農業のための土地利用はいくつもの種を絶滅に追いやり続けています。

また、私たちが現状にとどまったり、事態が悪化したりする可能性も確かにあります。存在に関わるリスクは、それにふさわしいだけの注目を浴びることはほとんどありません(トビー・オードの著書は、これらのリスクについての優れた概要です)。

進歩は必然的なものではなく、未来がどうなるかは今日の行動にかかっています。私たちは、いずれ自分たちが進歩を成し遂げるだろうと言っているのではなく、進歩を成し遂げることが可能であると言っているのです。私たちが直面している問題が、人類の歴史と同じくらい古いものであろうと、ここ数十年の間に私たち自身が作り出したものであろうと、今の私たちにとって重要なことは同じです。私たちは化石燃料の使用量を減らすことも、核兵器を放棄することも、貧困や子供の死亡率、飢餓を減らすことも可能なのですから、これらの問題を注意深く研究していくべきです。

これらの2つの目標は一緒になっている — 私たちは世界の大きな問題を研究すべきである。なぜなら進歩を成し遂げることが可能だからだ

問題と進歩について考えるときによくある間違いは、2つのうちのどちらか一方に焦点を当てれば、もう一方は考慮しないことが必要とされると考えることです。進歩についての証拠を示すことは、まだ私たちが抱えている問題の表面を取り繕うことを意味し、逆に世界的な問題の証拠を示すことは、これまで私たちが成し遂げてきた進歩に言及しないようにする必要があるということです。

例えば、ニューヨーク・タイムズ紙における私たちの活動に大きく依拠した記事の中で、ニック・クリストフは次のように書いています。「だから、私は頻繁に頭をかきむしることを請け合うが、21世紀初頭の世界で最も重要な傾向として歴史家がいずれ見るかもしれないものに注目するために、ほんの少しだけ憂鬱な気持ちを中断しよう:私たちは、恐ろしい病気、非識字、そして最も深刻な貧困の根絶に向けて進歩している。」

私は、これは正しい見方ではないと思います。進歩を学ぶことは、私たちが直面している深刻な問題に対して一休みすることを意味するべきではありません。この2つの側面は一緒になっています。私たちは進歩できることがわかっているからこそ、私たちが直面している問題を研究することが重要なのです。

このことを理解するために、別の可能性を考えてみましょう。もし、進歩することが不可能ならば、大きな問題を研究する理由はほとんどないでしょう。私たちが気にかけるであろうことは、私たち一人ひとりと、おそらく私たちの身近にいる何人かの人たちが、元気で安全であるのを確認することだけです。私たちが生きているのが異常な時代、つまり進歩を成し遂げることのできる大きな問題に直面している状況だからこそ、直面している問題に焦点を当てなければならないのです。

私たちが進歩に関心を持つのは、私たちがすべての可能な世界のうちの最良のものに住んでいるわけではないからです。

進歩を説明することと、問題を説明することは一緒です。私たちは進歩できるからこそ問題を学ぶ必要があり、大きな問題に直面しているからこそ進歩について学ぶ必要があるのです。

結論

私たちがOur World in Dataで報告する内容を決定する際の指針となるのは、シンプルな質問です:「私たちの世界に積極的に貢献するためには、この世界について何を知る必要があるのだろうか?」

進歩とは問題を解決することです。そのため、解決に貢献したいと望む人は以下のものの両方を学ぶ必要があります:

もしあなたが問題に関心があるならば、あなたは進歩を学ぶ必要があります。私たちが達成した進歩は、過去にどのように問題を解決したかを学ぶ機会を与えてくれますし、最も基本的なことですが、進歩が可能であることを知る機会も与えてくれます。

もしあなたが進歩を成し遂げたいならば、あなたは問題を研究する必要があります。私たちが特定したすべての問題は、進歩するための機会なのです。世界をより良い場所にするための第一歩は、私たちが現在直面している問題を理解することです。

私たちの使命は、この理解から生まれます。OurWorldInData.orgにおける私たちの目標は、世界が直面している大きな問題についての概要を広く紹介し、非常に大きな問題であっても前進することが可能であることを示し、そして、可能な前進を達成するためにこれらの大きな問題に取り組むように人々を鼓舞することです。

私たちは、進歩を追求する文化に貢献したいと願っています。それは、私たちが直面している非常に大きな問題を研究しようと決心し、その問題に対する進歩に貢献しようと率先して行動する人々の文化です。私たちは、思慮深い人々に世界の大きな問題と進歩の可能性を伝え、彼らがエンジニア、政治家、有権者、寄付者、活動家、創業者、あるいは研究者となって問題を解決するようになることを望んでいます。

謝辞:この文章の草稿を読んでいただき、非常に有益なコメントやアイデアをいただいたハンナ・リッチー、アーネスト・ファン・ボーデン、チャーリー・ジャッティノ、マシュー・バーゲル、エステバン・オルティス-オスピナの各氏に感謝いたします。

Our World in Dataの他の記事を読む:
世界的な生活条件の短い歴史、そして私たちがそれを知っていることが重要な理由

脚注

[1] 地球規模の問題に対する人々の認識についての調査データは、リンク先の記事のほか、GapminderのIgnorance SurveyとIpsosのPerils of Perceptionの研究を参照してください。

[2] Institute of Health Metrics and Evaluationの大規模な年次研究Global Burden of Disease (GBD)では、2017年にマラリアで死亡した人は62万人と推定されており、そのうち57%が5歳未満の子供でした。

マラリアによる死亡者数の世界的なデータは不確かなものです。マラリアで亡くなる子供の数を非常に正確に把握していることを示唆するのを避けるために、私は35万3000人から35万人に数字を丸めました。

WHOは、マラリアによる死亡者数はもっと少ないと推定しています。ここで私がIHMEの統計に頼っているのは、WHOが子供のマラリアによる死亡者数の最近の推定値を発表していないからです(死亡者数の合計値のみ)。

このデータやその他の情報については、私たちの「マラリア」の記事をご覧ください。

[3] 最近のmRNAワクチンの進展は、マラリアに対するワクチンの見込みにとっても期待が持てるものです。しかし、その道のりはまだ長いことは確実です。

[4] さまざまな分野からの関連した研究のリストです:

Alice Evans (2020) — Overcoming the global despondency trap: strengthening corporate accountability in supply chains, In Review of International Political Economy, 27:3, 658–685, DOI: 10.1080/09692290.2019.1679220

Rees, J. H., & Bamberg, S. (2014). Climate protection needs societal change: Determinants of intention to participate in collective climate action. European Journal of Social Psychology, 44(5), 466–473. doi:10.1002/ejsp.2032

Roser-Renouf, Connie, Maibach, E. W., Leiserowitz, A., Zhao, X. & Zhao (2014) — The genesis of climate change activism: From key beliefs to political action. In Climatic Change, 125(2), 163–178. doi:10.1007/s10584–014–1173–5

Joel Mokyr (2011) — The Enlightened Economy: Britain and the Industrial Revolution, 1700–1850.

Chan, M. (2016) — Psychological antecedents and motivational models of collective action: Examining the role of perceived effectiveness in political protest participation. Social Movement Studies, 15(3), 305–321. doi:10.1080/14742837.2015.1096192

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