私たちの大部分は、世界がどのように変化したかについて誤解している(特に将来について悲観的な人たちは)

Japanese translation of “Most of us are wrong about how the world has changed (especially those who are pessimistic about the future)”

Never Too Late To Mend
12 min readSep 14, 2018

データを視覚化するサイトOur World in Dataに掲載された“Most of us are wrong about how the world has changed (especially those who are pessimistic about the future)”という記事の翻訳です。この記事を読む前に、「世界的な生活条件の短い歴史、そして私たちがそれを知っていることが重要な理由」に目を通していただけると、より文脈がわかりやすいと思います。以下、訳文です。

私たちの大部分は、世界がどのように変化したかについて誤解している(特に将来について悲観的な人たちは)

2018年7月27日 マックス・ローザー

Our World in Data(データで見る私たちの世界)において、私たちは世界中の生活条件がどのように変化しているかを示すための実証的データと研究をまとめています。はたして、それは必要なことなのでしょうか?

意見調査機関であるIpsos MORIは、28カ国26,489人の詳細な調査を行い、私たちに答えを与えてくれました。[1]

ほとんどの人はグローバルな貧困が増加していると考えているが、実際には反対のことが起こっている

最初の図は、調査対象の人たちが次の質問にどのように回答したかを示しています。「過去20年間に、絶対的貧困の状態で暮らす世界人口の割合は減少していますか、増加していますか、それとも同じ数のままですか?」

人々の過半数(52%)は、絶対的貧困の状態にある人々の割合が上昇していると考えています。真実はその反対です。事実として、世界中で絶対的貧困の状態で暮らす人々の割合は2世紀にわたって低下し続けており、過去20年間でこのポジティブな展開はかつてないほど速くなっています(グローバルな貧困についての私たちのエントリーを参照)。最近の時代では、たとえあなたがどの貧困ラインを選択したとしても、貧困ライン未満の人々の割合は低下しています(ここを参照)。

この質問に正しく答えた人たちもいます。5人に1人は貧困が低下していることを知っています。しかし、正解の割合が国によって大きく異なっていることは興味深いです。私が星印をつけた国は、1世代前(1990年)には低所得国または中所得国の下位だった国です。このような貧しい国では、グローバルな貧困がどのように変化しているかを多くの人が理解しています。一方で、より豊かな国の人々 — 人口の大半が何世代も前に絶対的貧困から逃れた国の人々 — は、グローバルな貧困に何が起こっているかについて非常に間違った認識を持っています。

ほとんどの人は貧しい国で児童死亡率が低下していることを知らない

私たちはグローバルな貧困について間違っているだけではありません。同じ調査では、人々に次のように質問しました。「過去20年間に、開発途上地域の児童死亡率は増加しましたか、減少しましたか、ほぼ同じままでしたか?」

ここでもデータは非常に明確です。過去20年の間に、開発途上国と後発開発途上国の両方ともで児童死亡率は半減しています。[2]

この調査はまたもや、ほとんどの人がこれを認識していないことを示しています。平均して39%の人しか児童の死亡率が低下していることを知りません。そして、人類が今までに達成した成果の中で、ますます多くの子供たちが人生の脆弱な最初の数年間を生き延び、両親が赤ちゃんを失うという悲しみを免れるようにすることよりも偉大なことはあるのでしょうか?これは人類の最大の達成の1つでなければなりません。

そして十分な情報のない人々の割合は、絶対的貧困についての知識と同様に、世界の豊かな国々のほうがはるかに高いです。Our World in Data(データで見る私たちの世界)における私たちの仕事は必要でしょうか?この調査によれば、新しいことを学ぶセネガル人やケニア人はほとんどいないでしょう。しかし、もしあなたの友人がアメリカや日本にいるならば、私たちの仕事をシェアしてもらえればきっとその人たちの助けになるでしょう。

どうしてこれが重要なのか?

1.特定の傾向についての誤解は、世界がどのように変化しているのかについての一般的な不満を強める

世界中でのこれらの真に重要な変化についての広くいきわたった無知は、世界がどのように変化しているのかについての一般的な不満につながります。YouGovが別の調査において、より一般的な質問:「すべてを考慮にいれて、あなたは世界が良くなっていると思いますか、悪くなっていると思いますか?」と聞いたとき、前向きに答えた人はほとんどいませんでした。フランスとオーストラリアではたったの3%(!)しか世界が良くなっているとは考えていません。

そして、貧しい国ではやはり、前向きに答えている人の割合が高いことがわかります。[3]

2.誤解は、私たちのメディアと教育システムの失敗を明らかにする

グローバルな健康や貧困の面で世界が停滞したり、さらには後退していると多くの人が認識しているのに対し、実際にはまさにその同じ側面で、私たちは歴史の中で最も急速な改善を成し遂げているという事実に対して、私たちは何をなすべきでしょうか?

まず、これは単に悲しいことです。それは、私たちが必要以上に世界が悪いと考えているということです。私たちが生きている時代について、私たちは必要以上にひどく考えており、世界中の人々が今まさに達成しつつあることについても、私たちは必要以上にひどく考えています。

次に、世界で何が起こっているのかを理解し、伝えていく上で、私たちはひどい仕事しかできていないことが明らかになります。特に豊かな国では、教育システムやメディアは、世界がどのように変化しているかに関する正確な見通しを伝えられていません。それこそが、間違いなく私たちが彼らに求めている主な期待の1つであるのというのに。[4]

3.私たちは過去に否定的であるだけでなく、将来についても悲観的である

世界がどのように変化しているのかについての私たちの認識は、私たちが将来可能であると信じるものにとって重要です。

もし世界にとって可能なことについて人々に尋ねたとしたら、ほとんどの人が「あまりない」と答えます。下の図は、「今後15年間で、世界中の人々の生活条件が良くなると思いますか、悪くなると思いますか?」という質問に対する調査回答を表しています。人々の半数以上が停滞を予想しているか、状況が悪化すると予想しています。幸いなことに、現在人々が最もひどい生活条件にある場所では、今後の年月において何が可能かについてより楽観的です!

全体的に、調査の結果は明らかです。私たちは世界が停滞している、あるいは後退していると考えているだけでなく、このような感覚上だけの停滞や後退が今後も続くと予想しています。

世界にとって可能なことについてのこの悲観主義は政治的に重要です。そもそも物事が良くなると予想していない人は、ポジティブな発展を引き起こすことができる行動を求める可能性は低いでしょう。一方、わずかな楽観主義者たちは、彼らが期待している改善のために必要な変化を見たいと望むでしょう。

私たちが達成したことについての知識は、冷笑主義のための場所を残さない

最後に、この調査は、過去に対する私たちの認識と将来に向けた私たちの希望との間に関連があることを示唆しています。下の図は、世界の発展についての人々の知識のレベルによって、将来を楽観視する程度が大きく異なることを示しています。

未来について最も悲観的だった人は、世界がどのように変化したかについての基本的な知識が最も少ない傾向がありました。調査の質問に1つも正解することができなかった人のうち、わずか17%だけが将来的に世界がより良くなると期待しています。スペクトルのもう一方の端では、世界がどのように変化したかについて非常に優れた知識を持っている人たちは、今後15年間に達成できる変化について最も楽観的でした。

これは相関関係であり、そして私たちが知っているように、相関関係は因果関係を含意しません。因果関係が存在するかどうかを理解するためには、世界がどのように変化しているかをより正確に把握することによって、人が将来に何が起きるかについての信念を変えるかどうかを知る必要があるでしょう。残念ながら、私はこの質問を調べた研究を知りません。[5]

もちろん、未来がどのようになるのか誰も知ることはできません。そして、ここ数十年で私たちが目撃した進歩が必然的に続くようにするものはないですし、グローバルな発展の悲観主義者の全員が情報が与えられていないわけでもありません。しかし、私たちがこれらの調査から知ることができるのは、これら2つの見方が同時に起こるということです:悲観的な人は、世界で起こっていることをほとんど理解していない可能性が大幅に高い。

そして、明らかに疑問なのは、なぜ良い情報が与えられている人々が将来についてより楽観的なのでしょうか?

私たちが見てきたように、グローバルな発展について誤解しているということは、大体において世界がどう変わっているかについてあまりに否定的であることを意味します。これらの質問に間違ったということは、冷笑的な世界観を持つことを意味します。冷笑主義は、状況を改善するためにできることは何もなく、そうするためのあらゆる努力が失敗する運命にあるということを暗示します。冷笑主義者が言うには、私たちの歴史は失敗の歴史であり、未来にも同じ事態が続くことが予期されます。

これに対して、質問に正しく答えるということは、あなたが物事は変化できると理解していることを意味します。グローバルな健康と貧困がどのように改善しているかを正確に理解することは、冷笑主義のためのスペースを残しません。未来を楽観視している人は、世界をより良く変えることは可能であるという知識に基づいて彼らの意見をまとめることができます。なぜなら、彼らは私たちがそれをやってきたことを知っているからです。

追加の図:

この話題に関する講演のために、私は上のいくつかの図の要約を作成しました。あなたが役に立つと思った場合に備えて、ここに載せておきます。

脚注

[1] この調査の完全な参照情報は、Ipsos MORIによって2017年9月18日に出版された「Chris Jackson (2017) — Global Perceptions of Development Progress: ‘Perils of Perceptions’ Research」です。

[2] 実際には、平均的な児童死亡率が低下しているだけでなく、すべての国(2つの非常に小さい国を除く)で児童死亡率が低下しています。

[3] この図は、非常にネガティブな富裕国とさほどネガティブでない貧困国との間の所得水準の差を示しています。

[4] この発見は、最近出版されたアンナ・ロスリング・ロンランド、ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリングの共著「Factfulness」(邦訳)の出発点です。この著者たちは、私たちの心が極端な側面(私たちの世界の最も裕福な、最も貧しい、最も暴力的な、最も腐敗している側面)に注意を払うために、私たちの認識が非常に間違ってしまい、彼らが言うところの「過度に劇的な世界観」にたどり着いてしまうことについて説明をしています。この過度に劇的な世界観とは、私たちの世界の最も劇的な面をすべて結び付けてできたものですが、この世界に住む大部分の人々の現実であるような世界についての巨大な盲点を持っています。過度に劇的な世界観は、実際にはまれなすべての物語(それらが異常であることがメディアで報道されている理由ですが)を含む世界の像を私たちに与えますが、実のところ一般的であるものを全く理解していません。

[5] もしあなたがこの質問を調査した研究を知っているときには、私たちに連絡をしてくだされば、この記事のこのセクションを更新します。私はこのつながりについて本当に知りたいと思っていますので、もし連絡をくださればとてもありがたく思います。

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