2020年に読んだ本
2019年はこちら。
石黒圭 「よくわかる文章表現の技術 I 表現・表記編 II 文章構成編 III 文法編 IV 発想編 V 文体編」
翻訳などで文章を書いている割には「日本語よく分からん」ってなるので、参考として手に取った。この本自体は文章の正解を示すものではないので、即効性があるわけではないが、参考になる考え方は満載されている。各講のまとめを抜書きして都度読み返すようにしたい。
Nina Brown, Thomas McIlwraith, Laura Tubelle de González “Perspectives: An Open Invitation to Cultural Anthropology 2nd Edition”
読んだというか翻訳した。作業が終わっていざ投稿という段になってウェブサイトを見に行ったら第2版が出されていて頭を抱えるも、何とか修正して公開。中身はと言うと、人類学の入門教科書としてよく書けている章もあれば、ちょっと勘弁してほしいという章もあるなど、玉石混淆という言葉がよく当てはまるだろう。姉妹教科書で「探求:生物人類学への開かれた招待」なる本も出ていたので、誰か翻訳してください。
Lote Vilma Vītiņa “Worms, Clouds, Everything”
手のひら大の20ページくらいの絵本(?)だったけど、見終わったらISBNが付いててびっくりした。
小出由紀子 「ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる」
ムックのような出来合いで出先で一気読みした。ヘンリー・ダーガーはアウトサイダーアートの代表選手みたいに見られているけど、正直言ってこの人の人生をひっくり返して調べることの倫理はしっかりと問われてしかるべきだと思う。
野矢茂樹 「論理学」
論理学の導入本としては必要十分な事柄が書かれているはずなんだけど、あまりにも簡潔に話が進みすぎててこれでいいのかどうか、狐につままれたようになる。個人的には戸田山和久の「論理学をつくる」のような、「論理学でござい」みたいな教科書で殴られるほうが好み。
Amy Williams “Landmarks of Britain”
イギリスの名所案内であって、それ以上でもそれ以下でもない。
R・L・ワイルダー 「数学の文化人類学」
数学の成り立ちを文化進化の観点から説明…というと「あ、そう」で終わりにされそうだけど、この本の何がすごいって、60年近く前に書かれたとはとても思えないほど現代的な進化の考え方をしていること。度肝を抜かれた。Open Universityの教科書としてベストセラーになったという売り文句だけど、この本が売れるってのはすごい社会だったんだな、アメリカは。
湯川秀樹 「外的世界と内的世界」
講演録と各所に寄稿した短文が収められた単行本。この人の場合、印刷物に書いた文章はオチをつけようとしているのが分かるけど、講演のほうは取り留めのない話が続いていって何の結論もなく唐突に終わるのでちょっと笑っちゃう(それくらい突然に終わる)。
Mary Wood Cornog “Merriam-Webster’s Vocabulary Builder”
ラテン語・ギリシャ語の語幹をもとにして、数千語の単語を説明していく参考書なわけで、まあ、テストとか受ける人のものかな。その予定がない人(自分のように)は枕元に置いておいて毎晩決まった量をこなしていくくらいが精々だろう。英語の文章読んでいれば知らない単語なんていくらでも出てくるので、単語の勉強は腰を据えてやるというよりは、常に単語帳アプリを開いておく苦行を続けていくしかない(つらい)。
佐々木高政 「英文構成法<五訂新版>」「和文英訳の修業」「新訂英文解釈考」
「構成法」「修業」は和文英訳の参考書で、クソ真面目にやれば(暗唱用例文を全部覚えるとか)かなりの力がつくはず。やってないけど。「解釈考」は日本語で書かれた英文解釈の参考書としては最高峰の位置にあると思うけど、解説が少ないので、辞書とか文法書とかひっくり返した挙句、「佐々木先生が仰りたいのはこういうこと……なのか?」みたいに曖昧なままになってしまう。まあ、折に触れ読み返してみるか。
多田正行 「思考訓練の場としての英文解釈(1)」「 思考訓練の場としての英文解釈(2)」
こちらも難しい英文解釈の参考書として挙げられることがあるが、この本の難しい感の半分以上がレイアウトの読みにくさにあると思う。解説も懇切丁寧だし。印象としては気難しいお爺ちゃん教師で、質問すると「こんなことも分からんのか」とかぶつくさ言いつつ「いいか、これはだな…」から始まって延々と説明してくれるみたい。逆に「解釈考」は優しげな大学の教授で、おもむろに英文を黒板に書き始め、板書が終わったらしばらく文を見つめた後にこちらを振り返って「ね?」とだけ言っておしまい。こちらは頭の上に?が飛んでいる状態とか。
Trident Press International “The New International Webster’s Pocket Grammar Dictionary of the English Language, New Revised Edition” “The New International Webster’s Pocket Thesaurus of the English Language“ ”The New International Webster’s Pocket Quotations Dictionary”
古本屋によく売ってるペーパーバックの辞書みたいな本のセット。読んだというか目を通しただけ。
小学館 「クラシックプレミアム 第1巻~第50巻」
買ったまま放置していたCD付き雑誌。重い腰を上げてようやく読み(聴き)始めたけど、これ6年も前のもので、ずいぶん長いこと放置していたな、と。ひとまずクラシックについては一通り基礎知識が得られた(ということにしておこう)。これ以上クラシック音楽を聴くかは知らんけど。
小学館 「JAZZ100年 第1巻~第26巻」「JAZZの巨人 第1巻~第26巻」
買ったまま(以下同文)。
旺文社 「英語長文問題精講 新装版」「英文標準問題精講 新装5訂版」「英文法標準問題精講 新装4訂版」「和英標準問題精講 新装5訂版」
由緒正しい、端正な参考書でございました。
レオポルト・インフェルト 「真実を求めて」
家に転がっていたのを手に取った。二十世紀前半の物理学者の自伝であるが、この時代の人たちは、まあ、状況に翻弄されるよね。特に、ポーランド生まれのユダヤ人ともなればなおさらか。登場する物理学者たちはまさに綺羅星のごとく、著者が郷愁にかられて共産主義ポーランドに戻るところなども、まさに時代を感じさせる。
ヴァルター・ハイトラー 「思索と遍歴:科学と哲学の接点に立って」
これもまた家に転がっていた。機械論的な考え方(物理的・化学的な分析ですべてが理解できるという考え方)ではだめなものもあるよ、ということを口角泡を飛ばして主張しているんだけど、こっちとしては「はぁ、そっすか」みたいな感じで、50年以上の隔絶というか、現代との問題意識の差がある気がする。
中央公論新社 中公文庫「世界の歴史」第1巻~第3巻
以前に一度挫折した世界史の全集もの全30巻。今回は最後までいけるだろうか。
Paul Flowers, Klaus Theopold, Richard Langley, and William R. Robinson “Chemistry 2e”
読んだというか翻訳した。作業が終わるころにMediumのデザインが変更されていることに気づいて、別の場所に移ることを決心。Markdown記法で書き直したり、Bookdownのパッケージを試したりで四苦八苦しているところなので、もう少ししたら公開します。(追記:GitHub Pagesで公開しました。https://betterlate-thannever.github.io/Chemistry-2e/index.html)
今年は家に積んであった本を消化していっただけの実に退屈な読書であり、翻訳も中途半端なまま年を終えることになってしまった。部屋にはまだ本の山が2つほど残っているので、来年のなるべく早くの時期に崩して、もっと自分が興味を持てる本を読んでいきたい。